一級建築士 野島 亨

世間一般の住宅業界は、日々コストダウンに努め、「坪単価」に代表される建設費自体の価格破壊の波は本当に厳しいようです。
一部の職人さん達からは「もうやめるよ」と言う声まで、聞こえてきます。
業界で一体なにが起きているのか、もしかしたらあなたにも「責任」があるかもしれない話です。
昨今の住宅業界
最近の住宅を見ていると、効率を追及し、建材や設備など工業製品を増やし、人件費がなるだけかからない、規格化しマニュアル化された、まるでプラモデルでも造るかの如くハイスピードで家が出来上がっていきます。
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大きな住宅街を歩くと、同じような建物がひたすら並んでいます。 |
そこには、伝統的な技術や匠(たくみ)の技の類(たぐい)は一切必要ありません。
ホームセンターで買い揃えた道具一式を持った、20代そこそこの若い大工が親方となって、そうした家を作ることだってあるくらいです。
そして、絶対的な仕事量があるのはやはり、大手メーカーなのは言うまでもありません。
神社や寺院を造れる、宮大工と呼べるような優れた技術を持った大工さんだとしても、食べる為にはそういった仕事に従事する場合もあるくらいです。
どんな経緯経歴、技術があったとしても、プラモデル住宅の仕事に従事する大工さん達は、ひとくくりにして「組立工」とさえ、呼ばれてしまう。
大手メーカーは仕事量があるからといった理由で単価を低く設定し、効率だけを追い求めさせます。
そして頑張った仕事の見返りが、ますます下落する工事単価なのです。
やってもやってもどんどん苦しくなるアリジゴクのような状況。残念なことにそんな職人さん達から「もうやめるよ」と言う声が、聞こえてくるんです。
坪単価と利益を追求するあまり、受注段階で厳しいコストで受注し、必要なマージンだけとったあと、結局下請のほうにしわ寄せを作って調整しているのです。
これじゃあ、職人さんの技術でお客様のために良い仕事を提供する、なんて意思はハナっから無いのと同じですね。
住宅建材の普及
人件費は、職人さんの給料からんでいるので極端なコストダウンは図りにくいのですが、さらに知っておくべきは、建材や設備の仕入れ単価についてでしょうか。
大手メーカーは、建材等の仕入れ単価が、定価ベースの2割〜3割程度だということです。
たとえば定価10万のサッシは、2万で仕入れることが出来るため、契約時に2割引にしてもらったとしても、メーカーは仕入れのなんと4倍で転売できるようなもの。
家一軒の建材総額から考えると、いくらの利幅があるのでしょうか?
坪単価競争もあり、値引きをどの程度しているかまではわかりませんが、なんだか覚せい剤の末端価格みたいな?数字です。
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窓枠建材のサンプルです。木に"見える"のは表面のシールだけで、内部はなんと「接着剤で固めた紙」で出来ているのです。 こういった部分から発生する化学物質が人間に悪影響をもたらす場合もあるのです。 |
住宅に、品質の安定しない無垢材や、それらを加工する大工さんの手仕事が減ってしまい、建材や設備だらけになってしまうのは、こういった理由があるためなのでしょう。
参考→木の短所について
問題点はあなたかも・・・
腕のある職人さんは、たくさんの給料がもらえて当たり前。たくさんいるお弟子さん達は、早く一人前になるために切磋琢磨し、技術を身につけ次世代に受け継がれていくものでした。
また、安全に快適に、住みやすくする為に長い年月をかけて考え出された住宅に対する技術や考え方そのものも、日本建築はかなりのレベルに達していたはずです。
坪単価に代表される価格破壊の波の中には、こういった流れはもう、ありえません。
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「軒の出」も、価格破壊の犠牲になりました。大きく作っても面積に関係ないし、安くならないから。→軒の出について |
しかし、適切な価格で、適切に工事を依頼する、といったことがしっかり出来さえすれば、このような心配は不要だと思います。
建材を出来るだけ使わず、知識と技術力のある専門家が手塩にかけて、時間をかけて造る。
そうやって本来のあるべき形で造られた建物こそ、20年〜30年しかもたない、といわれている最近の住宅の寿命、とは比較にならないものになることは言うまでもないでしょう。
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住宅の寿命に関するデータです。日本だけ極端に「短い」のがわかります。 いかに短命な住宅が多いのかがわかります。 |
35年ローンを組んだ挙句、20年足らずで改修しないと使えなくなってしまう場合があるなんて、考えただけでも恐ろしいですからね。
ただ、最近のお施主さん達も、無理を言い過ぎているところがあるのではないでしょうか?
そういった仕事を安く請けてしまった職人はどうなるかと言うと・・・
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自分の生活を守るために、飲む量を減らす。
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道具を買い替えることも控え、新しい車も買わなくなってしまう。
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世の中のそれらを販売している会社は、なかなか利益が上がらず、その会社が取引している関係会社への支払いはもちろんまた減ってしまう。
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結局世の中の経済循環がスムーズにいかなくなり、不景気を後押ししてしまう。
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もらえるはずの給料がまた、減ってしまう。
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風が吹くと砂が飛ぶ→目に入ると失明してしまう→失明した人は三味線弾きになる→三味線が必要になる→猫の皮が求められ猫が減る→ネズミが増える→ネズミは桶をかじって穴があく→結局桶屋が儲かる。 |
自分だけ得すればいいと考え、安く、安くしたツケは、結局廻り廻って自分に戻ってきてしまうかもしれないのです。
風が吹けば桶屋が儲かる、とはよく言ったものですね。
何が本当に得なのか
坪単価で損をするか得をするか、と考える時点でその人は損をしているのです。
良い方法は、適切な価格で、適切な工事をあなたの為にやってくれる、本物の技術を持った専門家や設計士に依頼することです。
★業者選びのチェックポイント★→「後悔するリフォーム工事」
「坪単価いくら?」は禁句。
あなたの予算ばどのように使われるのか、納得いくまで説明を受けてください。
そしてもうひとつ重要なのが、なるべく天然自然の素材を使う事。
値段は若干高いでしょうが、そういった素材は10年後〜20年後の未来でも、手に入る可能性が高いのです。
ちょっとした補修に、建材が型番遅れ、商品はもう生産していない、になると例えば外壁ならまるごと取り替え・・・、というふうに、メンテが大工事に発展しかねない恐れもあります。
さらに、身近の職人さんを使った仕事ならば、後々の修理や補修も依頼しやすいのです。
建物の耐久年数や、建物の品質的なもの、建材から発生する有害物質へのリスク、後々のメンテナンスも含め、一番得な方法は何か、分かっていただけましたでしょうか?
「坪単価」についてもっとくわしくお知りになりたい方はこちらから。
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